イルミネーション

 

明るい空が嫌いだ。よく晴れたおひさまの香り、暖かい空気。どこまで歩いても歩いても日陰に入らなければ付いてくる。逃げ場のない私の身体と、それを取り巻く空気の境目がはっきりとわかるのが、どうしようもなく孤独を照らされる気がしてしまう。
暗がりを好む私たちはきっと、その境目が曖昧になって溶けてゆく心地良さが好きなのだ。
この季節の夜は、どこもかしこも街がキラキラと電飾が眩しい。しかしこの明るさは不思議と受け入れられる。無理矢理照らされたそれらを、急いで永遠を誓った男女たちが眺めて写真を撮りまくる。そういう人達のために作られた嘘の明るさは、昼間の明るさとは違って私のことは照らさない。男女たちの間を縫って歩く私は、溶けて曖昧になったままの空気同然だ。
極めて視力の低い私は眼鏡を外して散歩をする。街のイルミネーションが、2重3重にもぼやけて見える。自分の手を明かりに重ねて見ると、指の間から漏れる光は私の手の輪郭を超えて重なってくる。ほら、このまま夜が終わらなければ私は誰にも見つからずに消えてしまえるのに。